黒潮続流の強まりが北太平洋を温める~高解像度モデルが明らかにした海洋内部の変化~

2026.04.16

【概要】
本研究では、北太平洋の海水温が海洋モデルの解像度によってどのように変わるかを調べました。渦を表現できない従来のモデルでは、亜熱帯域の海が実際よりも冷たく再現される傾向がありました。一方、渦を表現できる高解像度モデルでは、黒潮続流が強まり、暖かい海水が効率よく運ばれることで、この低温の誤差が大きく改善されることが分かりました。

【詳細】
海の状態や将来の気候を調べるために使われる数値モデルでは、海を細かいマス目(格子)に区切り、それぞれの場所で水温や流れを計算します。このマス目の大きさを「空間解像度」と呼び、マス目が大きいほど解像度は低く、細かいほど解像度は高くなります。
将来の気候を長い期間にわたって予測する場合、計算量の制約から、一般に「低解像度モデル」が用いられています。低解像度モデルは地球規模の変化を調べるのに適していますが、海流の細かな構造までは十分に表現できない場合があります。一方、「高解像度モデル」では、より細かいマス目で計算するため、海流のより現実的な姿を再現できますが、計算に多くの時間がかかるため、長期の気候予測に用いられる機会は限られています。
本研究では、この解像度の違いが、北太平洋の亜熱帯域における海の表層の水温にどのような影響を与えるのかを調べました。その結果、低解像度モデルでは、亜熱帯の広い海域で実際よりも低い水温が再現される傾向があることが分かりました。一方、高解像度モデルでは、この誤差が大きく改善されていました。
両方のモデルに共通して、亜熱帯域には、黒潮から温度の高い海水が運ばれています。この海水は、黒潮から運ばれたあと、移動する途中で海面から冷やされながら亜熱帯域を循環しています。この共通した循環の中で、両モデルの違いを生んでいるのが、日本の東に続く黒潮続流の強さです。
低解像度モデルでは、黒潮続流の流れが弱いため、黒潮から運ばれた海水が亜熱帯の内側に届くまでに時間がかかります。その間に、海水は海面から冷却を受けるため、結果として亜熱帯の内部では水温が低くなっています。
一方、高解像度モデルでは、現実に近い強い黒潮続流が表現されます。このため、暖かい海水は、海面で冷却を受けながらも、短い時間で東へ、さらに亜熱帯の内部へと運ばれます。その結果、相対的に温度の高い海水が亜熱帯域の広い範囲に供給され、より現実に近い水温分布が再現されていました。
本研究は、気候予測で一般的に用いられている低解像度モデルでは、黒潮続流の強さが十分に表現されないことで、亜熱帯の水温に誤差が生じうることを示しています。海流の構造を適切に再現することが、将来の海洋環境や気候変動を正しく理解するために重要であることを、本研究は明らかにしました。

【論文情報】
掲載誌:Journal of Climate
題名: Upper-ocean warming in the subtropical North Pacific Ocean due to the intensified Kuroshio Extension in the eddying model compared to the non-eddy-resolving model
(黒潮続流の強まりがもたらす亜熱帯北太平洋の海の表層の昇温~高解像度モデルと従来モデルの比較~)
著者:Yusuke Ushijima, Hideyuki Nakano, Kei Sakamoto, Ryo Mizuta, Hiroyuki Tsujino
DOI:10.1175/JCLI-D-25-0060.1
URL:https://doi.org/10.1175/JCLI-D-25-0060.1

【研究サポート】
文部科学省気候変動予測先端研究プログラム JPMXD0722680734

【本件に関する問い合わせ先】
氏名:牛島悠介
電話:089-927-9833
E-mail:ushijima.yusuke.fp@ehime-u.ac.jp