日本周辺の海洋熱波~温暖化と海のゆらぎの役割~

2026.05.25

【概要】
海洋熱波とは、海水温が数日以上にわたって極端に高くなる現象で、生態系や漁業に大きな影響を与えます。本研究は、日本周辺で発生する海洋熱波が、長期的な温暖化だけでなく、年々から十年規模で変動する海面水温の影響を強く受けていることを示しました。解析の結果、こうした変動を取り除くと、海洋熱波の発生は大きく減少し、さらに北太平洋規模の気候変動パターンが日本周辺の海洋熱波に深く関わっていることが分かりました。

【詳細】
海洋熱波とは、海の水温が数日から数十日にわたって異常に高い状態が続く現象です。近年、その発生が世界的に増加傾向にあることが報告されており、日本周辺においても同様の傾向が指摘されています。海洋熱波は比較的短期間の現象ですが、生態系や気象に変化をもたらし、その影響は人間社会にも及びます。そのため、こうした極端な高水温現象がどのような要因によって発生するのかを理解することが重要です。
本研究では、1983年から2022年までの衛星観測に基づく日別の海面の水温データを用い、日本周辺の10の海域を対象として解析を行いました。まず、近年目立つ海洋熱波の増加と、長期的な温暖化との関係を調べました。2010年代以降のデータから、海面の水温の長期的な上昇傾向(温暖化)を取り除いて海洋熱波を検出したところ、海洋熱波が発生した日数は大幅に減少しました。この結果は、近年の海洋熱波の増加が、温暖化による背景的な水温上昇と強く関係していることを示しています。
一方で、海面の水温は温暖化によって一様に上昇しているだけではなく、年ごとから十年規模でゆっくりと変動しています。海洋熱波は数日から数十日という短い時間スケールの現象ですが、その発生は、こうしたより長い時間スケールの海の状態にも影響を受けていると考えられます。
そこで次に、本研究では、年々から十年規模の変動が、日本周辺の海洋熱波にどの程度影響しているのかを調べました。同じ日別の海面の水温データと10の海域を用い、年々から十年規模の変動を取り除いた海面の水温で海洋熱波を検出したところ、海洋熱波が発生した日数は大きく減少しました。これは、日本周辺の海洋熱波が、温暖化だけでなく、年々から十年規模で変化する海の状態にも支えられていることを示しています。
さらに、本研究では、日本周辺の海洋熱波と、北太平洋規模で変動する気候のパターンとの関係も調べました。その結果、北太平洋の海面の水温から定義されるいくつかの気候変動モードが、日本周辺の海洋熱波に影響を与えていることが分かりました。特に、ある特定のモードは、日本周辺の海洋熱波の発生に顕著な変化をもたらしていました。
本研究は、日本周辺で起きている数日から数十日規模の海洋熱波が、温暖化という長期的な変化や、年々から十年規模の海の変動といった背景的な状態の影響を受けつつ発生していることを示しています。このことから、日本周辺の海洋熱波を理解するためには、異なる時間スケールの影響を併せて捉えることが重要であることが明らかになりました。

【論文情報】
掲載誌:Journal of Oceanography
題名: Marine heatwaves around Japan over the past four decades: Links to interannual-to-decadal variability of sea surface temperature
(過去40年間における日本周辺の海洋熱波 ~海面の水温の年々から十年規模の変動との関係~)
著者:Yusuke Ushijima, Kei Sakamoto, Koji Yagi, Yuma Kawakami, Hiroki Togawa, Haruka Sasaki, Yoshikazu Fukuda
DOI:10.1007/s10872-026-00787-x
URL:https://doi.org/10.1007/s10872-026-00787-x

【研究サポート】※助成金などの情報を記載
本研究はJSPS科研費 JP24H02227の助成を受けたものです。

【本件に関する問い合わせ先】
(氏名)牛島悠介
電話:089-927-9833
E-mail:ushijima.yusuke.fp@ehime-u.ac.jp