No.13
         2006. 2. 14 発行
ニュース
 No.7          2006. 2. 14 発行
CMESニュース 目次

田辺信介教授がSETAC Founders Awardを受賞
田辺教授の環境毒性化学会(SETAC)国際賞受賞記念式典開催
生物環境試料バンク (es-BANK) 棟が完成
国際環境試料バンクシンポジウム参加報告
CMES機関研究員 張光玹氏の論文が、most downloaded articleに!
先進的科学技術体験合宿!研究者に会える2泊3日 ウインターサイエンスキャンプを当センターにて開催
RR2002プロジェクト ラオス・タイ調査報告
インド西ベンガル州(カルカッタ地域)における調査報告
第二回メコン水系の水資源マネージメントシステム開発に関する国際シンポジウム報告
新聞記事より 「耐性菌」海や川にも-同じ遺伝子を持つ細菌確認
CMES機関研究員自己紹介
インターン研修生自己紹介
外国人特別研究員自己紹介
編集後記

21世紀COEニュース 目次

環境毒性学会奨励賞受賞
第22回21世紀COEセミナー報告
第23回21世紀COEセミナー報告
第24回21世紀COEセミナー報告
第25回21世紀COEセミナー報告
第26回21世紀COEセミナー報告
第27回21世紀COEセミナー報告
地球温暖化防止フォーラム報告
SETAC (Society of Environmental Toxicology and Chemistry) 26th Annual Meeting in North America 参加報告
25th International Symposium on Halogenated Environmental  Organic Pollutants and POPs (DIOXIN 2005) 参加報告
COE研究員自己紹介(1)
COE研究員自己紹介(2)
COE研究員自己紹介(3)
COE研究員自己紹介(4)
COE研究員自己紹介(5)
IUMS2005参加報告
淡青丸調査航海報告
COE若手研究成果報告会およびCMES年次報告会、合同発表会のご案内
COE若手の会活動報告
編集後記
 

田辺信介教授がSETAC Founders Awardを受賞

 生態環境計測分野の田辺信介教授がSETAC(Society of Environmental Toxicology and Chemistry; 環境毒性化学学会)より「The 2005 SETAC Founders Award」を受賞しました。このSETAC賞授賞式は、2005年11月13日、アメリカのボルティモアで開催された北米SETAC年会の開会式のなかでおこなわれ、選考委員のDerek Muir氏より田辺教授に直接受賞記念楯が手渡されました。
 この賞は、環境化学・環境毒性学分野で最も優れた研究業績をあげた研究者及び世界のこの分野の研究に学術上大きな貢献をもたらした研究者に贈られるSETAC最高の賞であり、毎年世界で1人だけに贈られる賞です。
 今回の受賞は、田辺教授が長年にわたって日本およびアジアの発展途上国において学術的リーダーシップを発揮し、ダイオキシンやPCBなど環境ホルモンによる汚染を体系的・包括的に明らかにした研究業績に対して贈られたものです。アジアに研究拠点を置く研究者としては、田辺教授が初めての授賞となりました。

「Society of Environmental Toxicology and Chemistry(SETAC)」:1979年設立。政府、学界、産業界とも深く関与している著名な国際学会。会員数5,000人(参加国70ヶ国) 北米地区が活動の中心、ヨーロッパ地区、アジアパシフィック地区、南米地区の支部学会と連携して活動しています。
(生態毒性解析分野:岩田久人)
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田辺教授の環境毒性化学会(SETAC)国際賞受賞記念式典開催

 先の記事にあるように田辺信介教授の「The 2005 SETAC Founders Award」受賞を受け、2005年12月5日に本学において受賞記念式典が開催されました。当日の記念式典には、小松学長をはじめ県関係者、教職員・学生ら約150人が参加し、学長やセンター長の挨拶の後、田辺教授から謝辞が述べられるとともに、今回の受賞につながった研究の概要や将来展望、最近完成した生物環境試料バンクなどについて講演が行われました。また、式典に招かれた国立環境研究所の柴田康行博士が、環境モニタリングや試料長期保存の役割に関する講演を行い、試料バンクの活用法などについて意見が交わされました。
(生態環境計測分野:高橋 真)

生物環境試料バンク (es-BANK) 棟が完成
 
 以前本ニュースの中でお知らせしていた生物環境試料バンク(es-BANK)棟がこのたび竣工するに至りました。落成記念式典は2005年12月5日におこなわれました。
 この棟の完成により、これまで民間企業の冷凍倉庫に保管してあった試料を愛媛大構内で管理することができるようになりました。施設は鉄筋三階建て延べ800平方メートルで、-30℃の冷凍試料保管室の他、液体窒素による凍結試料保管室・解剖室・試料処理室・実験室・居室が備わっています。施設はさらに解剖室・試料処理室・実験室等を整備した後、来年度から本格的な運用を開始する予定です。

 生物環境試料バンク: 愛媛大学では過去40年以上にわたり、世界各地から野生生物個体や臓器試料、大気・海水・土壌などの環境試料を収集し、これらを活用して有害化学物質に関する世界最高水準の研究成果を挙げてきました。これら試料は冷凍保存されていますが、その総数は現在10万点にもおよび、世界でも有数のコレクションになっています。これら試料の収集を今後も進めるとともに、試料を体系的に整理して有効利用を図るための施設が「生物環境試料バンク」です (英名は、Environmental Specimen Bank for Global Monitoring,es-BANK)。
(生態毒性解析分野:岩田久人)
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国際環境試料バンクシンポジウム参加報告

 2005年11月13-16日にアメリカのチャールストンで開催された国際環境試料バンクInternational Environmental Specimen Bank (IESB)シンポジウムに参加した。本シンポジウムは、IESBにおける環境モニタリングや生態系への影響を調査する際の重要性に焦点をあて、IESBの国際協力を深める目的で開催された。アメリカ、カナダ、ドイツ、スウェーデン、フィンランド、そして日本のIESBに保管されている環境や生物試料を用いた様々な化学物質における汚染の現状と過去の復元、生物の健康や病気に関する調査、生態学的調査などの項目について、口頭44題とポスター39題の発表が行われた。生態環境計測分野と生態毒性解析分野からは4名(田辺信介教授、岩田久人教授、梶原夏子助手、国末達也)が口頭発表をおこなった。IESBの大きなメリットの1つに、様々な物質における過去の復元が挙げられるが、本シンポジウムでも多くの経年に関する報告がなされ、とくに本研究室で分析対象としている有機ハロゲン化合物に関する他国のデータはきわめて参考になった。CMESのes-Bankには世界各地から収集した約8万点に及ぶ環境と生物試料が保管されている。一方、アメリカ、カナダ、ドイツ、スウェーデン、そしてフィンランドの試料バンクでは保管されている試料のほとんどが自国のものであり、CMESのes-BANKは国際的にも重要な試料を保管していることが改めて認識できた。とくに、途上国における試料は国際的に貴重であり、CMESで最先端の研究を遂行していくことはもちろんのこと、他国との共同研究など国際協力を積極的に行っていく必要があろう。
(生態環境計測分野 COE研究員:国末達也)

CMES機関研究員 張光玹氏の論文が、most downloaded articleに!

 CMES機関研究員の張光玹氏が第1著者の論文(以下参照)が、日本陸水学会がSpringer社より発行する英文誌"Limnology"の2004年に発表された全論文のうち、2004年9月から2005年9月までの間に同社のホームページであるSpringerLinkから最も数多くダウンロードされた論文となりました。

 Chang, K. H., Nagata, T. and Hanazato, T. (2004) Direct and indirect impacts of predation by fish on the zooplankton community: an experimental analysis using experimental tanks. Limnology 5: 121-124.
(動物プランクトン群集に対する魚の捕食の直接および間接影響:実験タンクを用いた実験的解析)

 この論文は、動物プランクトン群集に及ぼす魚の直・間接的捕食影響について、野外実験タンクを用いて解析した結果を報告したものです。実験では、魚の捕食によりカイアシ類等の無脊椎捕食者を含む大型動物プランクトン群集の個体群密が低下した結果、小型動物プランクトンが優占となりました。この結果から、大型動物プランクトンは魚の捕食影響を直接的に受けるのに対し、小型動物プランクトンは食物網の栄養カスケードを通じて間接的な影響を受けると、著者らは結論付けています。栄養カスケードを実験的に検証した数少ない研究例として本研究は価値があるのですが、特に人為的に制御することが難しいカイアシ類を含む系での栄養カスケードの検証として、本研究は高く評価されています。
(農学部:中野伸一)

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先進的科学技術体験合宿!研究者に会える2泊3日-ウインターサイエンスキャンプを当センターにて開催

 2005年12月24日から26日の3日間、当センターでウインターサイエンスキャンプを開催しました。「サイエンスキャンプ」とは、高校生・高等専門学生のための科学技術体験合宿プログラム。ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー、材料、宇宙・海洋、エネルギー、地球化学など様々な分野の第一線で活躍する研究者・技術者から直接指導を受けられるプログラムです。毎年全国から参加者を募り、春は企業、冬は大学を中心に行われています。当センターには、昨年度の好評を受けて科学技術振興財団より二回目のオファーが来ました。とてもうれしいことです。今年もお引き受けすることにしました。
 さて、今年の参加人数は男女8名ずつの計16名。「生命の海を科学する~海洋のミクロ生態系~」という当センターのキャッチコピーに興味を持った意欲溢れる高校生達です。
 二泊三日と限られた時間の中で少しでも多くのことを知って、学んで、感じてかえって欲しいという想いで練り上げたプログラム。内容をご紹介します。一日目は講義です。まず一時間目は海洋生態系の基本的な仕組み(武岡教授)-地球の歴史、生物の進化にはじまり、先生ご自身が出演されているNHKテレビの番組を使って長年フィールドとされている瀬戸内海の紹介もありました。二時間目は鈴木教授によるマイクロビアルループと生食食物連鎖の説明。「記憶より記録」-記憶は100年も経てばなくなるが記録は絶対なくならない-巧みな導入で高校生達を引きつけた後、エネルギーは流れる・物質は循環すると説明。三時間目、田辺教授による生態系汚染の話。印象的な写真の紹介で研究の必要性をアピールするとともに高校生達を早速、研究室に勧誘。朝4時に家を出たという生徒もいて、講義がおわったあとには疲れがみられる人もちらほら。
 二日目は朝から実験です。3つのグループに分かれて、水質分析(大森研担当)、微生物量測定(鈴木研担当)、プランクトンの観察(上田研担当)を行いました。特に走査型電子顕微鏡でのプランクトン観察は大人気。目に見えるということはやはりとてもインプレッシヴで説得力があることを改めて実感しました。その日の夜に行われた演習室での夕食会では前日帰国した鈴木教授による東南アジア調査の様子がパワーポイントで解説付きで映し出されるなどアットホームでひと味違った懇親会となりました。
 三日目、それぞれの班にわかれてパワーポイントを使った発表会。夜遅くまで一緒に結果をまとめるのに頑張ったためでしょう。一気に結束力が増したようです。解散時に携帯電話のアドレスを交換し合う彼らの様子に時代の変化を感じました。今回の体験がが彼らの科学に対して関心を深めるひとつのきっかけになってくれればと思います。
(生態系解析分野:野中里佐)


RR2002プロジェクトラオス・タイ調査報告

 Research Revolution 2002(RR2002)では、インドシナ半島の残留性有機汚染物質(POPs)・ヒ素などによる汚染実態の解明、ヒトおよび生態系への毒性影響評価、汚染除去技術の開発について研究の展開を目指しています。これまでにRR2002の調査では、ベトナム、カンボジアの調査を主に行ってきました。3年目になる2005年度は、7月にベトナム、12月にラオス・タイの調査を実施しました。本稿では、僕自身が参加したラオス・タイの調査報告を簡単にしたいと思います。
 今回のラオス・タイ調査は12月12日から23日に行われ、鈴木先生、岩田先生からなる愛媛大グループ8名が参加しました。その間、ラオスでは中村先生(国立国際医療センター)の協力の下、高田先生(東京農工大)のグループと首都ビエンチャンを中心に行動を共にしました。タイでは北東部のコンケンに行き、滝沢先生(東京大)、Alissara先生、Kriengsak先生(以上コンケン大学)らの協力を得て調査を行いました。現地では、メコン川の堆積物や魚、地下水等の試料採取を行いました。インドシナを含むアジア途上国の環境汚染に関する調査・報告は少なく、とくにラオスについてはほとんどありません。そのため、今回採取された試料は貴重であり、その後の分析によって重要な知見をもたらすのではないかと期待されます。本調査では、主に堆積物グループ、魚グループ、地下水グループの3つに分かれて行動しました。僕自身は地下水グループ(といっても1人ぼっちなのですが・・・)として現地を走り回って来ました。
 地下水は主にヒ素の分析目的で各地の井戸から採取しました。御存知と思いますが、ヒ素は猛毒です。地質に由来する地下水のヒ素汚染は世界各地で深刻な問題となっており、地下水を飲用する住民に癌などのヒ素中毒が発症しています。とくにバングラデシュやインドの西ベンガル地方は世界最大のヒ素汚染地域と言われており、今日何千万の人々の健康が脅かされています。ラオスやタイでも地下水は主要な水源の1つであるため、その中にヒ素が含まれているのかどうかの調査は重要であると考えられます。
 今回調査した地域では、直接井戸水を飲んでいる人はあまりいないようでした。タイ北東部は田舎ですが、上水(どう処理されたものかはわからないが、少なくともホテルの水は黄色で土の匂いがした)がある程度整備されていました。ラオスの方ではボトル水を買って飲用している人もいました。しかし中村先生の話では、現地のある会社のボトル水は、きれいな水を作ってはいるけれども外側のボトルを生水で洗っているので、結局細菌で汚れてしまうとのこと。実際に、今回の調査で中村先生は飲料水に含まれる大腸菌の数を調べていましたが、ボトル水でもかなりの大腸菌汚染があったようです。途上国の飲料水は、化学物質だけでなく生物学的な問題も抱えていることを改めて考えさせられました。
 現地では、地下水グループに先生がいないので責任重大。カウンターパートとはなんとか英語でコミュニケーションをとれたことに手ごたえを得つつも、細かい点で誤解を招くことが多く、まだまだ修行が足りないことを実感しました。また、調査初日から吐き気を訴える現地のカウンターパートを見て、明日からどうなるかと不安にかられたり、現地の生水や氷入りの水を飲んでしまったり、普通に現地人と間違えられたり、飛行機に乗り遅れそうになったり・・・。その他にもいろいろな経験をすることができました。
 目を閉じれば今も浮かんでくる光景があります。こっちはラオス。目の前には乾季で中央が干上がったメコン川。そのメコン川を挟んだ向こう岸はタイ。メコンのゆっくりとした風に吹かれながら、川辺で飲むラオス地ビール、ビア・ラーオ。ラオスを訪れた際は、夕陽を肴に是非お試しを。
(生態環境計測分野 COE研究員:阿草哲郎)

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 インド西ベンガル州(カルカッタ地域)における調査報告

 2005年12月11日から21日にかけて、生態環境計測分野のメンバー4名(田辺信介教授、A. N. Subramanian教授、高橋 真助教授、越智陽子4回生)が、インド西ベンガル州カルカッタ市やその周辺地域において環境調査および試料サンプリングを実施した。これまで我われの研究室は、有害化学物質によるインドの環境汚染について調査研究を行ってきたが、その対象地域は主にインド南部に集中しており、その他地域の汚染実態については情報が少なかった。そのような中、本調査に先駆けて実施した母乳の調査で、カルカッタの都市ゴミ投棄場周辺住民のダイオキシン汚染レベルは世界的にみても高いことが明らかとなった。よって本調査では、カルカッタの都市ゴミ投棄場の現状を視察し、投棄場内外の土壌や浸出水、現地住民の消費している牛乳や養殖魚などを採取することが主な目的であった。また西ベンガル州の一部地域では、深刻なヒ素汚染の広がっていることが報告されている。よって、本調査でもカルカッタ近郊のヒ素汚染地域において井戸水やヒトの尿・毛髪、農産物、牛糞、土壌等を採取した。さらにカルカッタでは近年都市部での大気汚染が深刻化していることから、大気粉塵粒子や表層土壌の採取なども行った。
 我われ愛媛大学の調査団は、まず空路でインドのチェンナイ市に到着、翌日インド国立海洋技術研究所において、同研究所と愛媛大学、インド・アンナマライ大学などによる今後の共同研究方針についてミーティングを行った。また同ミーティングには、中国科学院広州地球科学研究所のZhang博士が出席し、英国ランカスター大学と共同で進められているパッシブエアサンプラーによるPOPsモニタリングへの協力が提案され、インドにおける調査の実施が決定した。さらにカルカッタでの調査のカウンターパートとなるParomita女史に会い、事前に採取を依頼したカルカッタ、マドラス、デリー地域の母乳試料を受け取った。Paromita女史はカルカッタの高校教員であり、以前我われが分析したカルカッタ地域の母乳試料の採取にも協力を頂いた方である。インドは地域によって言語や民族、文化、社会環境等が大きく異なるため、現地調査を円滑に行うためにはその土地の事情に通じたカウンターパートを得る必要がある(それでも「想定外」のことはしばしば起きたが)。
 カルカッタにはチェンナイから空路で移動した。空港からホテルに向かう道筋ですでにチェンナイよりもカルカッタの方が、都市環境の整備が遅れていると感じた。市内は常に慢性的な渋滞が発生しており、大気汚染は非常に深刻であった。一日中市内を車で走っていると鼻の穴が粉塵で真っ黒になるほどである。Paromita女史によると幼児の呼吸器系疾患やガンの発生率もかなり高いらしい。また市内には小規模なゴミ捨て場がたくさんあり、大抵牛や犬などの動物がいて、生ゴミを食べている様子がみられた。郊外にある都市ゴミ投棄場の規模は圧巻であった。現場から数キロ離れた場所から廃棄物の山がまるで城壁のようにみえた。都市ゴミ投棄場内には、残念ながら我われは入場できなかった(外国人がそのような場所で行動するのを周辺住民は良く思わないらしい)。よって、主に車上からの観察となったが、投棄場内から煙が立ち上る様子や、多数の家畜(+野良牛?)およびWaste Pickerが場内にいることは確認できた。また、ゴミ投棄場近傍には農地や養殖魚用の溜池も多く、地元におけるそれら農産物や養殖魚の消費が住民の汚染に寄与しているかもしれない、と感じた。さらに、現地スタッフからはゴミ投棄場の近くには化学工場もあり、その排水も集落に流れ込んでいるとの指摘があった。ヒ素汚染地域では、なるべく多くの井戸水‐人体試料のペアを集めようとしたが、様々な制約があり思ったような数は集まらなかった(この地域では今も黒魔術を信じる人が多いため、自分の毛髪を他人に渡すことに躊躇いがあるらしい)。最後に、比較対照地域として、郊外にあるインドの伝統的な農村を調査した。カルカッタ都市部の環境に比べれば、そこははるかに清浄で、ゆったりとした空気に満ち、心身ともに健康そうな子供達であふれていた。
(生態環境計測分野:高橋 真)

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第二回メコン水系の水資源マネージメント  システム開発に関する国際シンポジウム報告

 文科省の人・自然・地球共生プロジェクト(RR2002)のうち、インドシナ地域の水環境の安全性に関する研究をしている東北大と愛媛大では、昨年のハノイでの第一回標記シンポジウムに引き続き、本年度はバンコクのアジア工科大(AIT)で第二回のシンポジウムを開催した。12月7日の午前中にまず2題のキーノートレクチャーがあった。AITのC. Polprasert氏はタイでのゴミ処理から出る汚水を分解する細菌の話をし、次いでチュラロンコン大のG. Wattayakor女史がタイランド湾の重金属、有機スズ、POPsおよびPAHsによる汚染と微生物分解について発表した。一般講演としては、Tu Binh Minh氏(愛媛大農)がメコンデルタでのヒ素とPOPs汚染を、高田秀重氏(農工大)が熱帯アジア沿岸コア解析の結果を、鈴木聡(CMES)がメコン底泥での薬剤耐性遺伝子の多様性をそれぞれ発表した。次いで生物への影響として、三浦猛氏(愛媛大農)はヒ素がメコンの魚類に内分泌撹乱を起こす可能性を指摘し、池本徳孝氏(RRポスドク)がPOPsと金属類の生物濃縮の有無を報告した。午後は東北大クループの微生物およびリスクマネージメントに関する10演題が発表された。愛媛大グループの発表はどれも注目されており、活発な討論が行われた。RRはあと1年で終了となるが、東北大とは不断にポストRRについて話し合っており、今後もインドシナの水環境の化学・微生物リスク研究は別のプロジェクトとして継続されるであろう。2006年度にはRRとして最後の国際シンポジウムを計画しており、愛媛大からもさらに多くの人が参加する予定である。
(生態系解析分野:鈴木 聡)


新聞記事より 「耐性菌」海や川にも -同じ遺伝子を持つ細菌確認-

 生態系解析分野で行っている、テトラサイクリン耐性遺伝子の水圏での広い分布と耐性遺伝子・耐性菌の多様性の研究が朝日新聞西日本版(2005年12月25日付)に報道されました。
 薬剤耐性菌の問題は医療・畜産・水産の現場では古くから問題になっていますが、最近では欧米で種々の食品を介した耐性菌の移動が明らかになってきており、食の安全という面から注目されています。今回の研究では、黒潮軸外側の太平洋やメコン水系などの抗生物質汚染のない環境にも多くの薬剤耐性菌が存在することが明らかになりました。検出された遺伝子はこれまで人や畜産で知られているものと同じでしたが、複数のゲノタイプの遺伝子が見いだされました。また、種々の細菌間で耐性遺伝子の移動があることもわかりつつあります。
 耐性遺伝子は環境中で自己増幅して拡散する汚染物質なので、今後は耐性遺伝子が水や食品を介して人間社会へ侵入するルートを明らかにし、防御策を提言したと考えています。沿岸環境は海洋と人間の接点ですので、海洋環境での遺伝子伝播現象が人間社会へ及ぼす影響についての研究成果はまさにCMESならではのものだと思います。
(生態系解析分野:鈴木 聡)

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研究機関研究員自己紹介  阿南弥寿美(生態環境計測分野)

 私は平成7年度に愛媛大学農学部に入学し、学部3回生で環境化学研究室(田辺研)に配属されました。同農学研究科、同連合農学研究科、学振特別研究員を経て、平成17年度4月から研究機関研究員としてお世話になっています。田辺研究室歴も今年で9年となりました。3回生の頃、何となく「面白そう」と思い選んだ研究室でしたが、ここまで長く居座ることになるとは、当時の私は(田辺先生も?)想像もしていませんでした。
 研究室分属後、一貫して取り組んできた研究テーマは「野生生物の微量元素蓄積特性および解毒機構の解明」です。微量元素は元々環境中に天然起源で存在していますが、産業革命以降、人間活動由来の放出量が増えているとされています。野生生物の微量元素蓄積特性を把握することは、人為的に環境中へ放出された元素が野生生物へ与える影響を予測するうえで重要です。私は他の海棲高等動物と比較して情報が不足していたウミガメ類を主な研究対象とし、2種のウミガメ類(アオウミガメとタイマイ)について詳細な微量元素蓄積特性を明らかにしてきました。また、野生生物の中には、自然由来の微量元素を種特異的に蓄積する種がいることが知られています。イルカが水銀を高蓄積し、イカなどの頭足類が高いカドミウム濃度を示すことは、皆さんも耳にしたことあるかと思います。ウミガメ類も銅やカドミウムを高濃度に蓄積することが報告されてきました。近年、野生生物の元素高蓄積メカニズムや毒性影響評価に関する研究が進められてきましたが、未だ不明な点が多く残されています。私のこれまでの研究から、ウミガメ類に高蓄積した銅やカドミウムは金属結合タンパク質であるメタロチオネインとの結合により無毒化されており、さらに、カドミウムの高蓄積に特異的に応答発現するメタロチオネイン異性体の存在が示唆されました。
 いくつかの元素は必須元素として知られており、様々な生体反応に関係しています。しかしながら、生体内での挙動や機能が明らかにされていない元素も多く、これが野生生物となると尚更です。野生生物の微量元素濃度を測定し、その生体内挙動や機能を解明することは、他の要因による生体影響の検知や影響評価へと広がる可能性があるのではないでしょうか。
 9年前、訳がわからないまま始めた微量元素の研究でしたが、今は「面白い」と胸を張っていえるようになりました。この「面白さ」を研究室の後人に伝えていくことも、今後の仕事であると考えています。

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インターン研修生自己紹介  小川 真佐子

 現在、京都大学大学院地球環境学舎で環境マネジメント専攻しており、愛媛大学沿岸環境科学研究センターへは、単位の一貫であるインターンプログラムを通して4ヶ月間お世話になることになりました。学部時代は生態学を学び、多種に渡る生物フィルード調査、様々な民間活動を通して、人間と野生生物の衝突、「空間」の争いに取り組んできました。
 私たちが共通で取り組んでいる環境問題とは多様な問題です。どの環境問題に取り組むにもある種の専門性は必要だと思います。そして、学際的な知識もまた必要であると考えます。環境問題とは包括的な問題故にその解決方法も一つではありません。むしろ、答えがないことのほうが多いのです。ある問題解決に着手したとき、他に綻びがでてしまわないように考慮しなければならない、そして一筋縄ではいかないのが環境問題ではないでしょうか。「誰」のための問題かということを常に念頭に置かなくてはならないと思います。
 私が、化学汚染物質の研究に興味を持ったきっかけは、様々な民間活動にありました。野生生物保全、里域、里山保全に関わったとき、私自身、"フィールドレベルでは解決できない問題"と感じたことが多々ありました。例えば、害鳥として知られているカワウの生態動向の調査を行なったときや、かつて完全循環型社会であった里域においての聞き込み調査で村の"開放化"に伴っての様々な化学汚染物質による疑惑が生じたときです。"野生生物における化学物質汚染に関する実体を知りたい"という気持ちがこちらの研究室に来る動機でした。
 遺伝子レベルで研究することは大変なことだと思いました。しかし、得たものは大きいです。たった四ヶ月でしたが一年ぐらいいたように感じられました。研究をするには理想の環境だと思いました。また、コミュニティーとしても上手に組織されているところだと思います。特に、先輩方の後輩への面倒見の良さには驚かされました。
 遺伝子に関しての知識が皆無に近い状態であった私に、一から丁寧にご指導くださいました、酒井さん、須田さんそして、細胞チームの皆様、酸化的損傷共同研究の平川さん、竹下さん、技術に関する助言を頂きました、金助教授、また、何よりも私をインターン生として愛媛大学環境科学沿岸研究センターに心よく受け入れて下さいました、田辺教授、岩田教授、そして、研究室すべての方々に深く感謝いたします。

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外国人特別研究員自己紹介 Dr. Rolando S. Balotro(環境動態解析分野)

 I am Rolando S. Balotro, a former assistant professor from Department of Meteorology and Oceanography, University of the Philippines (UP-DMO). I am currently a JSPS Postdoctoral Fellow at the Center for Marine Environmental Studies (CMES). I have visited Japan in three occasions. Each of these visits lasted at least 2 years. Throughout this period, I have gained several japanese acquaintances and one of them even become my closest confidant and friend. He is Dr. Takaharu Hamada of the Ariake Sea Research Project, Saga University. I consider myself very fortunate to experience the interesting culture, live the japanese way of life, visit and see wonderful places, taste the delicious food and interact with the japanese people. Until now Japan never ceases to amaze me. Among the characteristics I admire in its people are their honesty, courtesy and tenacity. I believe that the latter virtue is an element of success among many japanese scientists. Japan had attained prosperity and modernity but at the same time preserved their history. Thus, forming a perfect union between its past and present, between culture and technology.
 As I would always tell my wife, I was bitten by a japanese bug on the very first day I set foot on japanese soil and its symptom will never go away. This symptom is my natural tendency to like anything that is japanese and to always return back to this country. I first visited Okinawa, Japan as a master of marine science student in Ryukyus University from October 1993 to September 1995. My supervisor, Prof. Suguru Ishijima was a former student of Prof. Mariano Estoque (UP-DMO) in University of Hawaii. They both introduced me to rudiments of numerical modeling of the coastal oceans. My second visit was to Kyushu, Japan from October 1999 to September of 2002. Under the supervision of Prof. Atsuhiko Isobe, I was conferred the degree of Doctor of Science. My research focused on the 3rd largest coastal ocean of the Seto Inland Sea, the Suo-Nada. It involved both modeling and observational work. The observational work was a collaborative task between Department of Earth System Science and Technology, Kyushu University and CMES, Ehime University. The modeling part of the study was a coastal implementation of the Princeton Ocean Model (POM). Through the combination of these two techniques, I gained important insights on numerical simulation of the coastal ocean processes. I estimated the average residence time of material nutrients, which is an important index of the coastal oceans for sustainable development. I extended the calculation from diagnostic (snap-shot) to prognostic (long-term) thereby, explaining the observed existence of the large counterclockwise eddy near the opening Suo-Nada in relation to freshwater discharge from the rivers surrounding the basin.
 My life as a graduate student in Fukuoka was not all about hard work. My wife Marilene and my son Paul were with me and made my endeavor challenging but pleasant. Paul was 2 years old when he attended the hoikuen. While my wife made herself busy by teaching english lessons to japanese kids and businessmen. At the time of our departure, Paul was fluent in japanese while Marilene was in near tears hoping she could put Hakata and Tenjin in her pocket to be always reminded of Fukuoka.
 From February 2003 to September 2005, I accepted a research position in Rosenstiel School of Marine and Atmospheric Science, University of Miami (RSMAS/UM) under the supervision of Dr. Villy Kourafalou. I was involved in the application of the HYbrid Coordinate Ocean Model (HYCOM) as coastal model to South Florida. HYCOM is a new generation of layered ocean model initially developed in RSMAS/UM with generalized vertical coordinate that varies in time and space. It has a robust capability of nesting small-scale coastal ocean to large-scale oceans such as the Atlantic and the Pacific. Our modeling efforts were supported by very intensive observations conducted through the cooperation between RSMAS/UM and the National Oceanic and Atmospheric Administration Atlantic Oceanographic and Meteorological Laboratory (NOAA-AOML). Both climatological and inter-annual (2000-2002) simulations were completed. The results of the model are in very good agreement with observations. For instance, we were able to simulate the widely accepted hypothesis about capture and transport of larvae/nutrients by large anticylonic eddies propagating along the Florida current. On top of all these research activities, my second child was born in the United States. Her name is Yumiko.
 Finally, I am back to japan for the third time. My proposal to study the impact of Kuroshio to the coastal environment of northern Luzon, Philippines was considered significant by the Japan Society for the Promotion of Science (JSPS) under the supervision of Dr. Xinyu Guo. This study will be for two years starting from November 2005. I hope to address the following issues in this study: (1) what physical indicator of the coastal oceans signals the intrusion of Kuroshio in Luzon Strait (LS)? (2) is there a monthly to seasonal variability in Kuroshio intrusion in LS? (3) how is Kuroshio related to the nutrient supply of coastal waters in LS? To answer these questions will involve both observational and modeling work. Observations will be conducted by mooring thermistors for one year along selected stations of LS where Kuroshio is believe to intrude. The observational efforts will be in collaboration with the UP-Marine Science Institute (UP-MSI) and CMES. I am hoping that through this collaboration, I can recommend one or two graduate students of UP-MSI to Monbusho doctoral program. The modeling part of the study will consider nesting of LS with northwest Pacific Ocean using POM through Japan Coastal Predictability Experiment (JCOPE) and using HYCOM through the US-Navy Pacific Model.
 I believe that there is a need for my future work to veer away from coastal oceans to larger regional domain where most current and pressing issues are needed for investigation. I wish to extend my concern to SCS. After my JSPS fellowship, I plan to write another research proposal to study how the precursor of global climate change is communicated from the Pacific Ocean to South China Sea through Luzon strait.



編集後記本ニュースでは毎号新聞記事紹介欄を設け、スタッフの研究活動が掲載された記事の紹介をしていますが、ここ最近は対象となる記事が多く、紙面の都合上、全てを掲載できなくなっています。これが編集者にとってはうれしい悩みになっています。         (岩田久人)

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ニュース


環境毒性学会奨励賞受賞

2005年9月1日から2日の2日間、東京都板橋区の淑徳短期大学にて開催された第11回日本環境毒性学会・バイオアッセイ研究会合同研究発表会において、連合農学研究科博士課程3年の久保田彰さんの発表が若手研究者を対象とした奨励賞を受賞しました。同賞は12件の口頭発表の中から2件に与えられたものです。
 久保田さんの発表演題は、「カワウにおける新規チトクロームP450 2分子種の同定・定量と残留性有機汚染物質蓄積の関係」で、沿岸環境科学研究センター生態毒性解析分野の岩田久人教授、金恩英客員助教授の指導のもとで取り組んだ研究です。今回は、異物代謝酵素であるチトクロームP450の新規分子種を野生鳥類で発見し、その分子的特徴を明らかにし、新たな進化学的知見を提示した点、およびこれら新規分子種の発現量と環境汚染物質蓄積濃度の関係を明らかにした点が高く評価されました。
(生態毒性解析分野)


第22回21世紀COE特別セミナー

 平成17年10月7日(金)、3名の研究者を海外より招聘し、第22回21世紀COE特別セミナーを開催した。まず始めに、インド・Annamalai UniversityのProf. Kandasamy KATHIRESANに"Mangroves and Global Environment: Flourishing or Perishing?"の演題で、マングローブ林再生・保全・管理計画について話題を提供していただいた。続いて、英国・Lancaster UniversityのProf. Kevin JONESをお迎えし、"Studies on the Global Cycling of Persistent Organic Pollutants"の演題で、大気サンプラーの開発と応用、実際の活用例を最新のご自身の研究成果とあわせてご紹介いただいた。最後に "Regional Cycling and Potential Long-range Atmospheric Transport of Organochlorine Pesticides in the Pearl River Delta, South China"と題して、中国南部における有機塩素系農薬の長距離大気輸送について中国・The Chinese Academy of SciencesのProf. Gan ZHANGにご講演いただいた。各講演後には活発な質疑応答が交わされ、今回のトピックへの関心の高さがうかがえた。
(生態毒性解析分野:梶原夏子)

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第23回21世紀COE特別セミナー

 平成17年10月12日に第23回21世紀COEセミナーを開催した。京都大学生態学研究センター教授である山村則男博士に "Effects of detritus feeding on dominance and coexistence of zooplankton" という演題で講演していただいた。山村教授は日本を代表する数理生態学者の一人である。今回は、山村教授の講演の後、沿岸環境科学研究センターの大森助教授とCOE研究員である加藤元海が発表を行った。大森助教授は「河川生態系の解析」という演題で発表を行い、加藤は "Game between zooplankton and fish competing for macrophyte refuge and the consequences for water clarity in lakes" という演題で発表を行った。山村教授は、水域生態系の動物プランクトンで代表的なミジンコとケンミジンコの共存について、数理モデルを用いてこれら動物プランクトンの共存の可能性について話された。ミジンコは水をフィルターのような歯でろ過をして、餌である植物プランクトンを摂食する。一方、ケンミジンコは植物プランクトンの細胞を捕獲して摂食する。このように、ミジンコは受動的摂食型、ケンミジンコは能動的摂食型と、大きく摂餌様式が異なる。従来の理論によれば、餌資源が植物プランクトン1種類であれば共存は起こらないが、山村教授はここにデトライタスという第2の餌を考慮した。その結果、両者の共存が示された。デトライタスの存在は、水域生態系において普遍的に存在する物質であり、この仮定は妥当な仮定と見なせ、実に自然界の共存をうまく説明する理論であった。
 山村教授の講演後の、大森助教授と加藤も数理モデルを用いた生態系解析に関する発表を行った。今回の特別セミナーは、数理的な話題が中心になる専門的なセミナーだったが、現場を対象としている研究者も参加し、理論的な研究がどのように生態系に応用されているかを肌で感じるいい機会であったと思われる。
(環境影響評価予測分野 COE研究員:加藤元海)


第24回21世紀COE特別セミナー
 
 2005年11月25日に第24回COE特別セミナーが開催されました。講演者は東京大学大学院の日比谷紀之教授で、「海洋深層における"乱流ホットスポット"のグローバルなマッピング」という題で講演されました。講演内容は、内部波の非線形作用による海水混合効果に注目し、理論的な研究から始まり、数値モデル実験、さらには実際の海洋観測によって、その混合効果が海洋の深層循環の駆動力となっていることまで言及したもので、他の現象とリンクした内部波研究が少ない現状の中で、大変感銘を受けた内容でした。
(環境動態解析分野 COE研究員:川村有二)

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第25回21世紀COE特別セミナー

 平成18年1月12日に第25回21世紀COE特別セミナーを開催した。国立環境研究所循環型社会形成推進・廃棄物研究センター主任研究員である滝上英孝博士に「バイオアッセイの環境・廃棄物モニタリングへの新たな展開」という演題で講演をいただいた。滝上博士は、バイオアッセイ(生物検定法)を用いた残留性有機汚染物質のモニタリングや影響評価を専門としている。近年ダイオキシン類の測定について、高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計による分析法の代替として、より迅速で低廉な簡易測定法の確立が求められている。滝上博士は、環境省の「ダイオキシン類簡易測定法検討会」のメンバーとして、バイオアッセイによる簡易測定法の公定化に取り組まれてきた。講演では同検討会の報告内容や国内外のバイオアッセイの導入事例、適用上の指針、将来の応用課題などについてわかりやすく紹介いただいた。また、バイオアッセイを「ハザード物質を総括的に検知する方法」として捉え、化学分析と併用することにより「毒性同定評価」や「毒性削減評価」といった新しい研究展開が可能となることを、最近の研究成果をもとに説明いただいた。滝上博士の提案する以上のアプローチは、今後のアジア途上国におけるモニタリングや影響評価にも極めて有用と思われる。講演後には将来の共同研究の展望などを含めた活発な質疑応答が交わされ、今回の講演への関心の高さがうかがえた。
(生態環境計測分野:高橋 真)

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第26回21世紀COE特別セミナー

 2006年1月17日、愛媛大学城北キャンパスで富山大学理学部の張勁助教授をお招きして26回目COE特別セミナーが開催された。張先生には、「沿岸海底湧水の地球化学とその海洋学的意義」という演題で講演していただいた。この講演では富山湾周辺地域における地下水の起源、富山湾の沿岸海底湧水の観測事例とこの沿岸海底湧水による物質フラックスに関する張先生の研究成果がまず発表された。続いて、東シナ海での海底湧水の可能性と世界各地での海底湧水の現状について報告された。さらに海底湧水が海洋に化学的影響だけではなくて、物理学的影響ももたらすことが示唆され、大変インパクトのある講演であった。講演後には、多数の質問が出されて、活発な議論が行われた。
(環境動態解析分野:郭 新宇)

第27回21世紀COE特別セミナー

 「高分解能大気海洋結合モデルを用いた地球温暖化のシミュレーション」
 2006年1月27日、温暖化問題の世界的権威者である東京大学気候システム研究センターの住 明正教授をお招きして、愛媛大学城北キャンパス、総合研究棟1において、上記のセミナーが行われた。
 地域的な長期間の気候変化に関する強い要求から、東京大学気候システム研究センターは、国立環境研、地球フロンティアと共同で、高分解能の気候モデルを開発した。本セミナーでは、高分解能化により、梅雨や黒潮などの変化が推定可能となった気候モデルの結果をベースとした地域的な気候の変化傾向が紹介された。モデルから予測された日本周辺の気候変化には、平均的な気温の上昇、梅雨前線に伴う降水の増加、冬の降雪の減少、黒潮の強化などがあげられた。近年、地球温暖化を含め、地球規模の長期変動についての関心が高まるなか開かれた本セミナーには、多くの学生や教官が参加し、活発な質疑応答が交わされた。
(環境動態解析分野 COE研究員:張 弼勳)

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地球温暖化防止フォーラム報告

 2006年1月28日、松山市立子規記念博物館で東京大学気候システム研究センターの住明正教授をお招きして地球温暖化防止フォーラムが開催された。
 住先生には、「地球温暖化をめぐる最近の話題」という演題で講演していただいた。この講演では地球温暖化問題に始まり、地球温暖化予測を行う気候モデルの仕組みや、気候モデルによる地球温暖化予測結果とその問題点について発表された。住先生のご講演を通し、気候モデルを用いて推定された100年後の全球平均の地表気温は現在より約3℃程度上昇することや、1980年代以降の地球温暖化の原因としては人間活動による影響が大きいことが示された。また、日本周辺においては、梅雨前線に伴う降水量の増加、冬季の降雪の減少、そして黒潮の強化などの地域的な気候変化が地球温暖化に伴って生じることも示された。住先生は地球温暖化問題を身近な事柄に例えて説明されていたため、一般の方々にも非常に分かり易い講演であった。講演後には、住先生に加え、愛媛県環境創造センターの立川涼所長、愛媛大学沿岸環境科学研究センターの武岡英隆教授、そして愛媛大学農学部の末田達彦教授の計4名によって討論会が行われ、地球温暖化防止に関して活発な議論が行われた。
(環境動態解析分野 COE研究員:高橋大介)



SETAC (Society of Environmental Toxicology and Chemistry) 26th Annual Meeting in North America 参加報告

2005年11月13日から18日にかけて米国メリーランド州ボルティモアにて開催された標記学会に参加しました。本学会は毎年北米各地で開催され、環境化学および環境毒性学分野では世界最大の学会の一つであります。生態環境計測分野からは田辺教授をはじめ、阿草、井上、国末、村岡の5名が参加しました。また、すでに報じられていますように田辺先生がThe 2005 SETAC Founders Awardを受賞されました。
 今回、私は"Contamination of arsenic in groundwater from Lower Mekong Basin"と題して、これまで情報が少なかったメコン河下流域地下水のヒ素汚染についてポスター発表を行いました。地下水のヒ素汚染とヒトへの健康被害は、世界中で深刻な問題となっており注目されています。本発表においても、アジアの研究者をはじめ欧米の研究者から色々と質問され、多くの研究者に我々の研究成果をアピールできたと思います。
 ボルティモアはカキの養殖で有名なチェサピーク湾の湾奥に位置する港町です。港付近は倉庫や工場が並び港湾都市の様相を見せていましたが、ほんの少し郊外に向かって歩くと典型的なアメリカの住宅風景が見られ、有意義な時間を過ごすことができました。
(生態環境計測分野 研究機関研究員:井上英)

25th International Symposium on Halogenated Environmental Organic Pollutants and POPs (DIOXIN 2005) 参加報告

 2005年8月21日~26日の間、カナダのオンタリオ湖湖畔にあるトロントにて開催された標記国際学会に参加した。学会のセクションプログラムは、POPs(残留性有機汚染物質)のグローバルモニタリングや挙動、ヒト曝露、分析法、リスクアセスメント、毒性など多くに分科したほか、近年注目を浴びている有機臭素系化合物のセクションや、北極圏や五大湖といったPOPs研究で有名な地域にスポットを当てたセクションもみられた。本シンポジウムは今回で25回を記念したこともあり、盛大に始まり、「50回目はどこで?」といったジョーク(?)も飛び交った。5日間で6題の基調講演、382題の一般講演、403題のポスター発表があった。基調講演には田辺信介教授の講演もあった。本研究室からは4人の博士課程学生が参加した。学会終了後に、カナダのNational Water Research InstituteのDerek Muir博士の研究所を訪問した。五大湖の調査で有名なこのオンタリオ湖湖畔の研究所は、調査船、調査機器の整備・調達の一切ができる専用のドックを構え、その規模の大きさに驚かされた。
(生態毒性解析分野 博士課程3年:新美聡子)

COE研究員 自己紹介(1) 石橋弘志(生態毒性解析分野)

 2005年4月よりCOE研究員として勤務することになりました石橋です。2003年3月に長崎大学大学院生産科学研究科にて博士号を取得いたしました。専門分野は環境毒性学です。
 これまで世界各地で内分泌撹乱物質による野生生物の生殖異常が報告されてきました。環境中には多種多様な性質をもつ化学物質が無数存在し、潜在的に内分泌撹乱性を有するものも含まれています。しかしながら、これらの内分泌撹乱性を効率的かつ精度よく評価する手法はほとんどないのが現状でした。内分泌撹乱物質の化学構造は主に女性ホルモンと類似しているため、硬骨魚類のエストロゲン受容体および標的分子ビテロゲニンに着目し、キンギョビテロゲニンに特異的な抗体を用いた酵素免疫測定法や、ヒメダカエストロゲン受容体およびビテロゲニン遺伝子の測定法を構築しました。ビテロゲニンは雌特異卵黄前駆タンパク質であるため、通常雄魚では検出されません。しかしながら、エストロゲン受容体に結合親和性を示す化学物質が生体内に取り込まれると雄魚でもビテロゲニンが産生されます。すなわち、雄魚でのビテロゲニン産生はエストロゲン様作用をもつ化学物質に曝露されたことを示唆します。確立した手法により内分泌撹乱作用の疑われている化学物質をスクリーニングしたところ、飼料中に含まれる天然由来の植物エストロゲンや代謝的活性化した医薬品起源化学物質でビテロゲニン産生が認められ、本手法の有効性が確認されました。さらに魚類の生殖能力に及ぼす影響をより詳細に解析したところ、一部の化学物質は親魚の産卵数・受精率を低下させるとともに次世代卵へ移行し、次世代胚の発生異常を誘起しました。これら繁殖阻害が認められた親魚ではエストロゲン受容体やビテロゲニンの発現が増加しており、これらシグナル経路は魚類の繁殖阻害に関与することを示唆しました。天然および合成化学物質の複合曝露により高濃度のビテロゲニン産生や男性ホルモンの分泌抑制、精巣の発達遅延なども明らかにしました。これらの知見は、魚類雌性化の作用機序解明の一助になりえると考えています。
 愛媛大学ではこれまで取得した専門的知識や技術を活かし、水棲哺乳類の核内受容体の同定・機能解析をおこない、バイオアッセイ法やリスク評価法への応用を試みております。これらの知見から、野生生物における環境汚染物質の毒性発現機序を解明したいと考えております。

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COE研究員 自己紹介(2) 加藤 元海(環境影響評価予測分野)

 2005年4月からCOE研究員として来ました。生まれは、愛知県の名古屋市で、実家の裏は熱田神宮の森です。大学は京都大学理学部に入り、1回生から3回生の途中までは分子生物学、3年目の途中からは物理学教室で理論物性の勉強をしました。数学を使って生物界の現象を解明するという研究をしてみたいと思って理学部に入ったのですが、私が入学したときには数理生物学の研究室はなく、生物と物理の両方を勉強しました。このような2つの大きく異なる分野にまたがった研究ができるのは、学科ごとに分けてではなく学部として一括して学生を募集する理学部だからできたことだと思います。大学院では、京都大学生態学研究センターで数理生態学を学びました。修士課程では、寄生から相利共生への進化条件に関する理論研究を行いました。博士課程では、捕食者-被食者系、特に湖沼における動物プランクトン-植物プランクトンの研究を行いました。湖沼が富栄養化すると、生物の個体数の時間変動が大きくなり、種が絶滅しやすくなるという富栄養化の逆説という古典的な理論が知られていますが、実際の野外ではこの理論が検証されることは稀でした。そこで、植物プランクトンの中に動物プランクトンに食べられにくい種類(アオコなど)がいる場合を考慮して数理モデルを立てて解析した結果、個体数の時間変動が富栄養化しても大きくならないことがわかり、より自然界で起こっている現象を説明する理論を見つけました。
 学位取得後は、主に米国ウィスコンシン大学の陸水学研究センターにて、湖沼の形態(広さ、深さ、湖盆の形)と富栄養化の起こりやすさの関係を理論的に研究しました。大きな湖ほど栄養塩を希釈する効果があり富栄養化し易いことは容易に想像できます。一方、小さな湖沼では沿岸帯に生息する植物群落が栄養塩を吸収したり、湖底環境を安定化して栄養塩の再浮上を抑えて、富栄養化をある程度抑制することが示唆されています。このように、富栄養化の起こりやすさは湖沼の形態に強く依存することが予想されます。そこで、湖沼形態を考慮した数理モデルを構築して解析した結果、栄養塩希釈効果も沿岸帯植物群落の効果も働かない、特異的な規模(特に水深)というものが中程度のところに存在することを突き止めました。
 このように私は、主に湖沼における富栄養化という現象に着目して数理モデルを用いた理論的研究を行ってきました。沿岸環境科学研究センターでは、これまでの研究の対象であった湖沼に加え、海洋に関してもいろいろと学びたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

COE研究員 自己紹介(3) 高橋 大介(環境動態解析分野)

 2005年4月からCOE研究員として勤務することになりました高橋大介と申します。2005年3月に北海道大学大学院水産科学研究科(環境生物資源科学専攻)にて博士号を取得しました。私の専門分野は海洋物理学で、これまで内湾における循環の形成・維持・消滅過程に関する研究を行って参りました。研究対象としていた海域は北海道の南西部に位置する噴火湾です。この噴火湾では、毎年夏季の表層において時計回りの環流が形成され、この環流によって形成される流れが湾内表層の循環を支配しています。しかし、これまでこの時計回りの環流がどのように形成され、どのように維持されているのかに関しては不明でした。そこで、私はこの点に注目し、夏季噴火湾表層における時計回りの環流の形成・維持機構を解明することを目的として研究を行って参りました。特に、私の研究は現場観測を主体とするもので、学部4年生時代から博士後期課程まで毎月一回程度、船に乗船し現場観測を行って参りました。現場観測では、海洋物理の観測では欠かせないCTD観測や音響ドップラー流速計(ADCP)を用いた係留観測を重点的に行い、海洋観測の基礎を身に付けることができました。さらに、得られた観測データの解析を通して夏季噴火湾表層のおける時計回りの環流の形成・維持機構に関して、以下のことが分かりました。夏季噴火湾表層における時計回りの環流は、海洋物理的には傾度流平衡という力学平衡状態にあり、中心部では約2.2日かけて湾内を一周していることが明らかになりました。また、夏季噴火湾に吹く南東季節風の空間分布を調べたところ、この南東季節風は湾周辺の陸上地形の影響を強く受けており、湾中央部から湾東部における領域では時計回りに回転するような空間構造を持つことが分かりました。しかも、湾内表層の海水はこの南東季節風に対して敏感に応答する性質があり、夏季噴火湾表層における時計回りの環流は南東季節風が湾内の表層水に時計回りの循環を供給することによって形成されていること、そしてこの南東季節風が供給する時計回りの循環によって環流が維持されていることが明らかになりました。
 今後は、これまでの経験を生かし、数値モデルを用いて東シナ海における残留性有機汚染物質(POPs)の輸送過程を解明して行きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。


COE研究員 自己紹介(4) 藤井 直紀(環境動態解析分野)

 戦後の60年間、本邦内湾域は沿岸の人々の生活と共に大きな変化をしてきました。特に高度経済成長期後の内湾環境の悪化は顕著であり、それによって我々は水質を基準とした規制型政策を30年余り続けてきました。しかし現在、その管理手法のあり方は転換期に来ています。つまり、スローガンが「水質保全」から「生物多様性の回復と水産資源等の豊かな海への再生」へと変わってきたのです。そこで私は広島大学大学院に在籍中、「内湾域の生物資源持続性を評価する手法の開発に努めてきました。次世代の環境指標づくりと言えなくはないですが、この指標づくりには別の一面もあります。私は現在1977年生まれの28歳。瀬戸内法制定(臨時措置法公布が1973年)頃に生まれた若い世代です。つまり現在活躍されているご年配研究者・行政執行者が知る「良き自然v」を知らない世代ということになります。ご年配研究者・行政執行者がご自身の体験した「良き自然」を目指した環境政策しても、私よりも若い世代はそれを想い描くことは困難です。生物資源持続性の指標づくりは世代間を超えた目標づくりにつながることが期待されます。
 海洋環境の指標づくりには、海洋生態系の変化を知る必要がありますが、その変化のひとつに「クラゲの大量発生」が挙げられます。近年、クラゲ類(例えばミズクラゲやエチゼンクラゲ)の大量発生が頻発し、ニュースにとり上げられています。アンケートを実施したところ、瀬戸内海西部ではここ十数年でミズクラゲが増えたと感じる漁業者が多くいます。実際に調査してみますと大量のクラゲが獲られますし、夏から秋にかけて表層に集群し、白色のパッチを形成する姿が観察されます。私は2000年から上真一・広島大学大学院教授、武岡・当研究センター教授と共に、この集群形成の様子を観察してきました。当研究センターに在籍中、引き続きこの集群形成のメカニズムを解明し、延いてはミズクラゲ大量発生の原因を突き止められるよう努めていきたいと考えております。v
 どうぞよろしくお願いいたします。

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COE研究員 自己紹介(5)  阿草 哲郎(生態環境計測分野)

 はじめまして。阿草(あぐさ)と言います。広島県尾道市の出身です。2005年3月に愛媛大学大学院連合農学研究科生物環境保全学専攻で博士号を取得後、2005年4月からCOE研究員として勤務しています。
 学部生の頃から、生態環境計測分野(環境化学研究室)でアジア途上国における微量元素汚染に関する研究に従事しています。近年、経済成長と人口増加の著しいアジア途上国では様々な環境汚染が大きな問題となっています。けれども、そういった地域の調査はこれまでほとんど行われていませんでした。過去に日本が経験したような公害問題を繰り返さないためにも、環境汚染の実態を明らかにすることは重要です。本研究グループは、課題の1つとしてアジア途上国を中心に有害物質のモニタリングを行っていますが、僕自身は微量元素(重金属も含む)を対象として研究しています。最近は地下水のヒ素汚染を主に研究を展開しており、そのため海外調査に行くことも度々あります。
 そもそもここまで歩んできたきっかけは、学部時代の海外調査でした。1999年11月、カンボジアの都市ゴミ集積場(ダンピングサイト)でのインパクト。これがすごかった。ダンピングサイトの環境は劣悪で、その中を裸足で歩いてゴミの中から有価物を集める幼い子どもたちがいます(写真参照)。けど彼らの目はキラキラしてるんですよね。こういった子どもたちの未来をなんとかしたい。途上国の環境問題解決のために、自分にも何かできることがあるだろう。調査結果をわかりやすく社会に提示し、地域、あるいは国を動かしていければ・・・。そんな考えから今の研究を続けています。その中で、自分のやるべきこと、自分にしかできないことを探しています。
 自分のモットーとしては、三国志に出てくる諸葛亮という人物が書いた「誡外生(外甥)書」にあるようにありたいと思っています(以下参照)。

夫志當存高遠。慕先賢、絶情欲、棄凝滞、使庶幾之志、掲然有所存。惻然有所感。忍屈伸、去細碎、広咨問、除嫌吝、雖有淹留、何損於美趣。何患于不済。若志不強毅、意不慷慨、徒碌碌滞于俗、黙黙束于情、永竄伏于凡庸、不免于下流矣。

 趣味はサッカーです。いつかCMESソフトボール大会に続いてサッカー大会を開こうと虎視眈々と機会を窺っています。体力と元気しかないですが、よろしくお願いします。


IUMS2005参加報告

 2005年7月23日から28日の6日間、サンフランシスコで開かれたIUMS2005に参加しました。IUMSとは、世界各国の微生物関連の学会(協会)が連合している国際組織です。この連合は微生物に関する全ての学問分野を含み、細菌学・真菌学・ウイルス学の3つの部会で構成されています。3年ごとに開催される世界大会は、微生物学の国際会議としては最大のものです。私は主に細菌学のセッションに参加し、ポスターセッションにおいては同世代の多くの研究者と議論を交わすことが出来ました。また、3部会合同セッションでは、過去20年で急増した珊瑚の細菌感染症と地球温暖化に伴う海水温上昇との関係が報告されるなど、特に近年の環境変化によって生じた新たな課題が多く取り上げられました。CMESからは3人が参加する予定でしたが、インド・バングラディシュからの2人が、ビザを取得できずにキャンセルしたのは大変残念なことでした。本大会のポスターセッションでのキャンセルが多かったこともまた、近年の国際情勢を反映していたのかも知れません。次回IUMS2008(於イスタンブール)は、全ての国の人が問題無く参加できる国際会議であってほしいと思います。
    (生態系解析分野 COE研究員:小林剛)

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淡青丸調査航海報告

 昨年17年11月6日から6日間、東大海洋研究所の淡青丸によって宮崎港から豊後水道に入り四国の周りを一周する調査を行った。本調査航海は、海洋研の共同利用研究の昨年度の公募に武岡センター長を主席研究員とする研究調査計画が採用され、行われたものである。その目的は、瀬戸内海の低次生産に対する陸棚斜面起源栄養塩の影響に関する研究及び豊後水道におけるマアジ仔稚魚の来遊メカニズムに関する研究である。近年陸棚斜面起源栄養塩が瀬戸内海生物生産に重要な役割を果たしていることがわかってきたが、その長期動態と栄養塩の影響範囲についてはこれまで明らかでなかった。また具体的なマアジの加入過程と黒潮暖水渦との関係について明らかでなかった。ここで行った研究成果は、COEプログラム2が目指す「地球環境変動による沿岸域生態系変動機構の解明と将来予測」に役立てられる。
 メンバーとしてCMESからポスドク・院生を含めて8人、加えて東海大学の杉本隆成教授、海洋研の五十嵐千秋氏、金煕容氏が参加した。
 調査は分野を超えて多岐にわたった。海底コア・表層底泥の採取や、水中懸濁態有機物及び動物プランクトンの安定同位体比解析及び有機物分解酵素の活性を測定するため、様々な地点で採水及びCTD観測を行った。
(環境動態解析分野 COE研究員:加 三千宣)

COE若手研究成果報告会およびCMES年次報告会、合同発表会のご案内

 毎年恒例となりました上記の合同発表会を、今年も開催致します。本発表会は、各発表の内容は質が高く、また参加者の間で活発な議論が展開されることから、学内外より大変高い評価をいただいております。開催日時と場所は、以下の通りです。日程、プログラムなどの詳細は、決まり次第、CMESのホームページにてお知らせします。たくさんの方々のご参加を、お待ち申し上げます。
(農学部・中野伸一)


 日時:平成18年3月20日(月)と21日(火)、
    いずれも午前9時から午後5時まで
 場所:愛媛大学総合情報メディアセンター1階

COE若手の会活動報告

 前号(COEニュースNo.6)の若手の会活動報告では、月例談話会について工夫や検討が必要である、ということを述べました。その後も新任研究員による研究発表を行ってきましたが、それに加え、毎月1名CMESの教授陣に「研究者とは」「研究者になるには」といった題目で特別講義をしていただきました。堅苦しいイメージの「講義」というより寧ろ「おしゃべり」といった雰囲気でしたが、自分の現在や将来の在り方について色々と考えさせられるものでした。また、各教授がそれぞれ異なる視点でお話しされており、我々にとって考え方の幅を広げるよい機会となりました。
 その他の活動として、第25回COEセミナーに併せまして国立環境研究所からNISEポスドクフェローの鈴木剛さんをお招きし、同日、COE若手特別セミナーを開催しました。鈴木さんの研究発表に対しCMESのPDや博士課程学生から活発な質疑がなされ、一方、CMES博士課程2年の酒井君の発表には、鈴木さんや、COEセミナーの講師をされた瀧上先生から多くの御意見や質問をいただきました。分野の偏った少人数のセミナーでしたが、参加した若手研究者は多くの刺激を得ることができたと思います。
(生態環境計測分野 COE研究員・若手の会幹事長:阿南弥寿美)

編集後記:2月上旬現在、だんだんと寒さが和らいできております。大変に恐れられていた鳥インフルエンザは、どうやら今年はまだ大丈夫のようです。しかし、昨年末から日本社会には大きな問題がどんどん明るみになって、大変です。来年度はCOE最後の年となります。我々の研究は、諸事に翻弄されず、しっかりとステップ・バイ・ステップで行きたいものです。

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