No.2
          2000. 8. 21 発行       

  <メニュー>

     はじめに
     「海は命―宇和島湾漁場環境調査報告書」刊行される
     CMESに導入された新たな機器類の紹介
     研究分野紹介 No. 2              
        過去から現在にわたる環境変遷を教訓とし、未来環境のありかたを考える:環境影響評価予測分野 
     海外からのCMESへの訪問者
     センタースタッフ自己紹介 No.2 郭 新宇(環境動態解析分野)
     くらしと土木展
     農学部100周年記念 政策研究フォーラム
        「沿岸水産資源の将来を考える−漁場環境の保全をめぐって−」
     CMES年次研究成果報告会
     非常勤研究員自己紹介 No.2
      ICS2000参加報告(2000年4月24日〜28日)
     編集後記

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 はじめに 

 CMESでは、この春より新たなメンバーが2人加わりました。鈴木聡氏(高知大より)と岩田久人氏(北海道大より)です。鈴木氏は、生態系解析分野の所属で、生化学・環境微生物学の専門家です。また、岩田氏は、生態環境計測分野の所属で、分子生物学・環境毒性学の専門家です。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

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「海は命―宇和島湾漁場環境調査報告書」刊行される

 愛媛大学および香川大学の研究グループが15年間携わってきた宇和島湾浅海養殖漁場環境調査の総合報告書(約750頁)が、CMESの協力によりこのほど遊子漁業協同組合から刊行されました。この報告書は、同漁協からの委託によって同グループが行ってきた研究の毎年の報告書を合本したもので、宇和島湾、宇和海の環境に関する様々な研究成果の集大成であるばかりでなく、地域と密接に連携・協力して行った長年の研究活動の貴重な記録ともなっています。この研究に携わった研究者のほとんどが現在CMESに所属しており、この研究は現在のCMESの基礎になったということができます。
この一連の研究の中で、持続的な魚類養殖生産を行うための環境基準に関する基本的考え方が生み出されました。同漁協の古谷組合長は、この考え方を背景に法律の制定を国に働きかけ、平成11年に「持続的養殖生産確保法」が制定されました。大森・武岡理論と呼ばれているこの環境基準の考え方は、水産庁長官が定める同法の運用基本方針の中に盛り込まれています。また、宇和海の環境に大きな影響を与える「急潮」に関する諸研究もこの研究によって始められ、大きく発展しました。これらの研究をもとに、現在CMESでは「宇和海水温情報システム」の実用化を計画しています。文責:武岡英隆

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 CMESに導入された新たな機器類の紹介

栄養塩・プランクトン自動監視システム:海水の水温、塩分、PH、溶存酸素濃度、クロロフィル蛍光、硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素、リン酸態リン、珪酸態珪素、懸濁粒子数を自動的に計測するシステムです。佐田岬先端部に設置され、海水をポンプで採集して1時間毎にこれらの項目を計測しています。データは電話回線で沿岸環境科学研究センターから取得できます。本システムにより、伊予灘、豊後水道の環境の長期的、短期的変動のモニターを行っています。 

 沿岸環境シミュレーションシステム:CPU16個、メモリ8GB、ハードディスク360GBを有するSGI-Origin2400を中心とするシミュレーションサーバ、SGI-Octaneを中心とする可視化システムと7台のSUN Ultra10による解析システムから構成されています。本システムは、瀬戸内海の高解像度数値生態系モデルを中心とする大規模な数値計算とデータ解析を行っています。

 低真空走査電子顕微鏡:本機器は低真空モードでも観察することのできる走査型電子顕微鏡です。低真空モードでは、導電性のない試料を金などでコーティングすることなく観察することができ、また、水を含んだ試料を液体窒素または冷却ステージにより凍結させ、顕微鏡試料室内で凍結乾燥してそのまま観察することができます。そのため、プランクトンや水中微生物など前処理の難しい試料でも、低真空モードで容易に観察することができます。さらに、凍結乾燥した試料を一旦取り出してコーティングし、高真空モードでさらに詳しく観察することもできます。観察時の操作はすべてパソコンのキーボード上から行うことができ、画像はファイルとして保存、印刷できます。
 センターではこうした低真空走査電子顕微鏡の簡便性を生かし、次のような研究・調査に役立てていこうとしています。
・カイアシ類を中心とした分類、形態学的研究
・宇和海漁場環境調査等におけるプランクトンの同定精度の向上
・赤潮発生時における赤潮プランクトンの同定
 
 さらに、試料ステージに収まる試料であるなら、そのままの状態で高倍率観察ができるため、プランクトンの観察以外にも幅広い活用を期待しています。

 フローサイトメーター:本機器は、水流中の微細粒子(細胞等)にレーザー励起光を照射し、各々の粒子から発する蛍光を測定し、粒子集団中における個々の粒子の大きさや細胞中のDNA含量等を測定します。さらに、大きさや蛍光により識別された粒子を分取(ソーティング)することもできます。今回導入された機器は、水冷のレーザー(488 nmと UV)を搭載しているためレーザーの出力が高く、空冷レーザーよりもさらに微細な粒子を検出できます。海洋では、植物プランクトンによる一次生産の大きな部分を微細な(<2 μm)ピコ植物プランクトンが担っていますが、本機器はこのような微細なプランクトンの検出・分取に威力を発揮するでしょう。また、特異的な蛍光抗体や蛍光遺伝子プローブを付与した細胞(細菌など)の検出・分取にも、本機器は有効でしょう。

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<研究分野紹介 No. 2>

過去から現在にわたる環境変遷を教訓とし、未来環境のありかたを考える:環境影響評価予測分野
     教授  井内美郎 (環境地質学)
    助教授  大森浩二 (水域生態学)
     助手  奈良正和 (古生態学)
 現在、この分野には、教官3名のほかに非常勤研究員1名、博士後期課程学生4名、博士前期課程学生5名、学部学生9名、合計22名が在籍しています。教官3名は理学部生物地球圏科学科に併任しており、地質学・生物学を担当しています。
 
 沿岸海域環境は、近年、人の手によって大きく変えられてきました。さらに地球温暖化に伴って今後100年のうちに海水面が50センチ〜1メートルも上昇するといわれています。
 
 瀬戸内海はこれからどのような姿をたどるのでしょうか。瀬戸内海はどのような姿が望ましいのでしょうか。我々はそれを環境がたどった歴史をもとに明らかにしようと考えています。

 水域環境の変化は、海底や湖底の堆積物に順序正しく記録されています。近年の環境変化のようすは、水温や水質などについての観測データによってとらえることが可能ですが、底質にはそのような近年の変化だけでなく、ずっとそれ以前の観測機器のなかった時代からの記録が残されています。人間が多く住み始める以前の瀬戸内海はどのような環境であったのか、それが高度経済成長以降どのように変わってきたか、そして現在はどのような状況にあるのか、海底や湖底の堆積物の中からそのような情報を読み出すことから我々の研究は始まります。また、海や湖の底に住む底棲生物は、水温・水質のような時々刻々変化する値というよりやや長期的な水質環境をモニターするのに適しています。底棲生物の分布を知ることによって、現在の環境や最近の環境の変化を知ることができます。

 我々の分野では、当面の研究対象を瀬戸内海(宇和海を含む)およびそこに流入する河川の流域としています。特に瀬戸内海では、これまで様々な開発が行われてきました。それに伴って海域環境も大きく変化しています。環境の変化を歴史的にとらえ、それを定量的にとらえることによって人間活動の影響をとらえることができるのではないか、というのが我々の基本的な考え方です。さらに、環境変遷史を研究するという立場は、これまでともすれば過去の研究でことたれりとする傾向があったわけですが、我々は未来をどうするのかという立場で取り組みたいと考えています。過去の開発の事後評価に基づいて、未来の開発の教訓とする。そのようななかで望ましい開発としてはどのようなことが考えられるのか、そのようなメニューの提示ができる学問を目指しています。

 この分野の当面の具体的課題としては、宇和海の底質生態環境の変遷や水理環境変遷史解明、瀬戸内海の海砂採取海域の生態学的位置づけ解明の研究を計画しています。前者は、愛媛県の委託研究として昨年度から開始されています。後者は、沿岸センターの各分野の教官の参加を得て総合的に実施しようという計画です。

 ここでは最近研究対象としてクローズアップされてきた「砂堆(さたい)」について、紹介します。最近、環境問題との関連で海砂採取が注目されていますが、海砂採取は海底の砂山とでもいうべき砂堆で行われています。つまり、海砂採取は瀬戸内海のどこでも行えるというものではなく、砂堆という特殊な環境が集中的にねらわれているわけです。それには、川砂採取や河口・海岸部での砂採取が禁止されてきたという歴史的な背景があるわけですが、砂堆には質のよい砂が厚く堆積しており、作業効率がよいという理由もあります。この砂堆での海砂採取の是非を議論するためには、海砂採取によってなくなる砂堆が海域環境中で果たしている役割を明らかにせねばなりません。ところが、砂堆という環境が科学的立場から認識されたのはごく最近のことであり、その役割評価の研究はまだ開始されていないのです。沿岸センターでは、砂堆の生態学適役割を明らかにするために、底棲生物・底質・流れ・海中プランクトン・微生物などについて総合的な研究を計画しています。本年度は海砂採取が実施されていない「健全」な海域である中島沖の貝原(かいはら)を対象として、底質・底棲生物・プランクトンなどの研究を開始しています。

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 海外からのCMESへの訪問者

●環境動態解析分野
1)Dr. George Mellor、平成12年3月10日〜12日、アメリカ東海岸の沿岸海洋モデルの  現状紹介と瀬戸内海の海洋モデルに関する意見交換、アメリカ、プリンストン大学. 

●生態環境計測分野
研究生
1)洪 恵郷、平成11年9月1日〜平成12年3月31日、有機スズ化合物による韓国沿  岸環境の汚染に関する研究、韓国
訪問者
1)Ms. Hamida Razak、平成11年4月5日〜12日、インドネシア沿岸域の化学汚染に関  する情報交換と共同研究の打合わせ、インドネシア海洋研究所・インドネシア
2)Dr. Muswery Muchater、平成11年4月5日〜12日、インドネシア沿岸域の化学汚染  に関する情報交換と共同研究の打合わせ、インドネシア海洋研究所・インドネシア
3)Dr. Byung-Yoon Min、平成11年9月22日〜23日、マッセルウオッチに関する情報交換、韓国・慶南大学
4)Prof. John P. Gisey、平成11年12月16日〜18日、生態毒性学に関する共同研究のための情報交換、アメリカ合衆国・ミシガン州立大学
5)銭 重均教授、平成12年3月14日〜3月26日、薬物代謝酵素系の生化学分析に関する情報交換、韓国・江陵大学

プロジェクト関連の招聘研究員
1)Dr. Alexander Tkalin、平成11年7月18日〜25日、国際学術研究マッセルウオッチに関する情報交換、ロシア・極東域水圏研究所
2)Dr. Jinshu Zheng、平成11年7月17日〜27日、国際学術研究マッセルウオッチに関する情報交換、香港・香港城市大学
3)Prof. Pham Hung Viet、平成11年11月29日〜12月3日、学術振興会拠点大学方式による共同研究のための情報交換、ベトナム・ハノイ大学
4)Prof. Nguyen Xuan Trung、平成11年11月29日〜12月3日、学術振興会拠点大学方式による共同研究のための情報交換、ベトナム・ハノイ大学
5)Prof. Nguyen Trong Uyen、平成11年11月29日〜12月3日、学術振興会拠点大学方式による共同研究のための情報交換、ベトナム・ハノイ大学
6)Prof. Tu Vong Nghi、平成11年11月29日〜12月3日、学術振興会拠点大学方式による共同研究のための情報交換、ベトナム・ハノイ大学
7)Prof. Nguyen Van Hop、平成11年11月29日〜12月3日、学術振興会拠点大学方式による共同研究のための情報交換、ベトナム・フエ大学
8)Prof. Bui Cach Tuyen、平成11年11月29日〜12月3日、学術振興会拠点大学方式による共同研究のための情報交換、ベトナム・ホーチミン農林大学

●生態系解析分野
1)Ahn Tae-Seok、平成11年10月12〜14、湖沼の富栄養化と微生物による有機物分解過程に関する情報収集、韓国・江漢国立大学
2)John Kuo、平成11年6月〜7月、日本の海草の分類と分布に関する研究、オーストラリア、ウエスタンオーストラリア大学

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<センタースタッフ自己紹介 No.2>

郭 新宇(環境動態解析分野)

 私は、7年前に中国青島海洋大学から来日した元留学生です。1997年に愛媛大学理工学研究科博士後期課程を修了後、東京大学海洋研究所COE研究員、地球フロンティア研究システム研究員を経て、去年の11月より現職に就きました。博士課程の時に、東京湾、東シナ海を中心に、沿岸海域における潮流、残差流低次生態系モデルの研究を行いました。地球フロンティア研究システムでの2年間で、日本近海海況予測実験に参加し、黒潮を中心とする高解像度海洋モデルを開発しました。 現在、このモデルの結果の解析を含み、黒潮と沿岸海域との相互作用に注目して研究を進めています。

 私は、元々は船舶工学の出身で、修士課程は海洋流体力学に、博士課程は海洋物理学に変わりました。その後、国費留学生として日本に来て、沿岸海洋学の勉強と研究を始めたわけです。専門がよく変わりましたが、研究の手法はほとんど変わっていません。いずれも数値計算という手法でやりました。

簡単に言えば、数値計算というのはコンピューターを用いて、離散化した格子において、紙と鉛筆で解けない方程式の解を求める方法です。当然ながら、専門によって対象になる方程式も違いますし、解を求める方法も違います。そこで、それぞれの専門の特徴が出てくるわけです。

 個人的な感想を言わせていただきますと、数値計算そのものはそれほど難しくないのです。難しいのは問題の設定、解の解釈などです。つまり、プログラムのコーディングより、物理の問題が難しいのです。

 私は最初に数学が好きでモデルの開発に興味があり、博士課程在学中に簡単な海洋モデルを作りました。最近、インターネットの普及とともに様々な優れた海洋モデルが発表されました。これにより、私の興味はモデルの開発から応用に移りました。

 現在、もっとも興味があるのは数値モデルを用いて海況の予測、つまり海における天気予報に関する研究です。色々な原因で、海況予測は天気予報より遅れています。観測データが少ないことが一つの原因ですが、コンピューター資源の不足も大きな原因です。海洋には様々なスケールの現象が存在し、互いに影響しながら海況変動を起こしています。また、海がつながっていますので各地の変動も互いに影響しています。一つの数値モデルで、全海洋のすべての現象を含むのは不可能です。

 それぞれの現象に対して解決方法がありますが、私が関心を持っているのは入れ子モデルです。つまり、解像度の荒いモデルで外洋域を表現し、解像度の細かいモデルで沿岸域を表現して、双方の相互作用は二つモデルの境界における情報交換で表現します。一つの例としては、北太平洋の大きさで黒潮を表現し、その中に瀬戸内海を置きます。北太平洋における黒潮の変動は、瀬戸内海モデルの境界を通して内湾域に再現されます。

 現在は、以上の考え方に基づいて学生と一緒に瀬戸内海モデルを開発しています。将来的には、これらのモデルに生態系モデルを入れて、瀬戸内海の海洋環境予測を行いたいと考えています。

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くらしと土木展

  平成11年11月26、27日にアイテムえひめ大展示場において、建設省四国地方建設局、運輸省第三港湾建設局の主催で「くらしと土木展」が開催されました。このイベントは土木の最新技術を一般の方々に紹介するために、毎年開催されているものです。大学や企業から100テーマを超える展示があり、地震対策、海岸工事、汚水処理といった幅広い内容の研究成果が発表されました。CMESでは、研究内容についてより多くの方々に理解して頂くために最近の研究成果をパネルにまとめて展示しました。

 環境影響評価予測分野では、海砂に関する研究成果を紹介しました。コンクリートを取り扱う土木関係者の海砂に関する関心は大きく、海砂に対する知識を深めようと多く技術者がパネルの前に立ち止まって見ていました。また、生態環境計測分野の環境ホルモンに関する研究成果の紹介は、会場を訪れた親子を中心に注目されていました。CMESの展示内容が土木技術とは離れているので展示を見ていただけるのか不安でしたが、予想以上に多くの方々にCMESの展示スペースを訪れて頂きました。

CMESでは今後も積極的に日頃の研究成果を公開し、最新の情報を地域の方々と共有していきたいと考えております。文責:兼田淳史

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農学部100周年記念政策研究フォーラム

「沿岸水産資源の将来を考える ―漁場環境の保全をめぐって―」
 2000年2月4日に、愛媛大学農学部大講義室において、農学部100周年記念、政策研究フォーラム「沿岸水産資源の将来を考える―漁場環境の保全をめぐって―」が行われました。フォーラムの内容は、以下の通りです。


 基調講演:篠原孝(農林水産省 研究調整官)「沿岸漁業の現状と水産政策の新方向」
パネリスト:
片岡千賀之(長崎大学水産学部)「西海町における漁業および漁業経済の現状と課題」
武岡英隆(愛媛大学CMES)「宇和海の物理環境とその長期変動」
田辺信介(愛媛大学CMES)「環境保全型養殖漁業の提案」
古谷和夫(全国かん水養魚協議会会長、遊子漁業協同組合 組合長)「養殖業の将来について」
立川百恵(えひめ生活協同組合 名誉理事長)「消費者が魚に求めるもの」

篠原氏は、人間はこれまで天然資源を加工して生存に必要のない物を作ってきたこと、これからは無駄なものを作らずリサイクルが持続する産業が成長するであろうこと、沿岸養殖産業は自然に無理のかからない程度であれば将来性の高い産業であること、および資源管理を怠らず自然環境に負担をかけない養殖産業は消費者が注目する質の高い商品を産み出せることを述べた。片岡氏は、愛媛県西海町の漁業の現状について、西海町では漁業が基幹産業となっており中でも養殖漁業は重要な産業であること、海草やアワビと魚の混合養殖を行うことにより漁場の環境浄化と養殖魚のブランド化を図ることが、西海町の漁業の発展に貢献する可能性を述べた。

 武岡氏は、宇和海・豊後水道では、急潮とbottom intrusionという2種類の外洋からの流入があり、これらの現象は夏期の豊後水道の生物生産や養殖産業を支える重要な役割を果たしていること、および現在愛媛大学CMESではこれらの流入に伴う栄養塩類の動態について佐田岬に監視システムを立ち上げていることを報告した。田辺氏は、養殖魚中における環境ホルモンの蓄積の可能性を指摘し、今後は環境ホルモンに汚染されていない養殖魚を市場に提供することにより、消費者に対する養殖魚の安全性の保証やブランド化につながると述べた。古谷氏は、現在危機的状況にある宇和海のアコヤ貝養殖では、これまではより大きい貝のみを選択的に使用したり、外国産貝やハーフ貝を使用してきたが、今後は地元で取れたより天然に近い貝による養殖に切り替え、宇和海に負担のかからない養殖産業を目指す必要性を述べた。立川氏は、消費者にとって、養殖魚は重要なタンパク源のひとつであるため、養殖魚の安全性の基準を明確にするためにはその生産過程と流通経路を明らかにする必要があると述べた。

  愛媛県は、日本随一の沿岸養殖産業が盛んな地域であり、本フォーラムに対する市民の関心も高く、上記の発表に対して活発な討論が行われた。
文責:中野伸一(CMES)、松岡淳(愛媛大学農学部)、西頭徳三(愛媛大学農学部)

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CMES年次研究成果報告会

  去る3月14日、沿岸環境科学研究センター年次研究成果報告会が工学部4号館において開催され、CMESの4つの分野の教官および学生が研究成果を報告しました。本報告会は年に一度、年度末に開催されることになっており、今回が第1回目でした。本報告会には、学内の教官、学生ばかりでなく、学外からの参加者も見受けられ、沿岸環境に対する関心の高さを感じました。また、地質学、生物学、物理学、化学といった幅広い分野にわたる研究成果が報告され、沿岸海域の環境科学を総合的に推進することの重要性を実感しました。

 座長、講演者および演題は以下の通りです。
座長 平井幸弘(教育学部教授)
1.ナローマルチビーム測深機SEABATを用いた高精度海底地形判読とその意義
  奈良正和 CMES助手
2.瀬戸内海海砂問題の地質学的側面
  井内美郎 CMES教授
3.沿岸生態系モデル:C + N循環への拡張の試み
  合田幸子 理工学研究科博士後期課程2年

座長 柳澤康信(理学部教授)
4.過栄養水域における微生物ループと古典的食物連鎖とのつながり
  中野伸一 CMES助教授
5.内海湾および遊子湾におけるアコヤガイの斃死と水温および植物プランクトンとの関係
  外丸裕司 連合農学研究科博士課程3年
6.北海道噴火湾における海産微細藻類に感染するウイルスの探索とその特性について
  生地 暢 CMES非常勤研究員
7.沿岸域における優占カイアシ類Paracalanus parvus s. l.の分類学的検討
  井上靖之 理学部生物地球圏科学科4年

座長 小泉喜嗣(愛媛県水産試験場主任研究員)
8.瀬戸内海における大潮小潮周期の環境変動
  速水祐一 CMES非常勤研究員
9.内海における懸濁物質の日周鉛直移動
  兼田淳史 CMES助手
10.豊後水道における急潮とbottom intrusionの経年変動
  乗松桂輔 理工学研究科博士前期課程2年
11.太平洋、黒潮と瀬戸内海のモデリング
  郭 新宇 CMES助教授

座長 川端善一郎(CMES教授)
12.人為起源物質による深海生物の汚染
  高橋 真 連合農学研究科博士課程3年
13.Tris (4-chlorophenyl) methaneとTris (4-chlorophenyl) methanolによるヒトおよび野生高等動物の汚染
  渡部真文 連合農学研究科博士課程3年
14.Contamination status and specific accumulation of butyltin compoundsand total tin in marine mammals.
  Le Thi Hi Le 連合農学研究科博士課程3年
15.海棲高等動物におけるヒ素の化学形態
  國頭 恭 CMES助手

文責:國頭 恭

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<非常勤研究員自己紹介 No.2>

生 地  暢(生態系解析分野)

 1969年和歌山生まれ、福岡・久留米育ち、牡羊座、A型。昨年12月に北海道大学大学院水産学研究科博士後期課程を修了後、財団法人水産科学研究奨励会研究員を経て、2月より現職。専門は海洋微生物学。現在までに赤潮原因藻類を主に海産微細藻類の増減に影響を及ぼす海洋微生物についての研究を行ってきました。内容としては、赤潮発生海域(和歌山田辺湾)から分離・同定した海洋細菌と微細藻類との混合培養、北海道噴火湾沿岸海水からの微細藻類感染ウイルス探索およびその特性(物理的(熱、pHおよびUV安定性)、生物的(形態、大きさ、感染状況、宿主域)、化学的(酵素および有機溶媒感受性))について、手法的に、藻類培養、電子顕微鏡観察および一般的なウイルス性状検査を用いて、学部および大学院で研究を進めてきました。フィールドは学部の和歌山田辺湾は既に分離されていた海洋細菌を用いたため、私自身は北海道噴火湾という赤潮とは全く関連性をないところで珪藻類のブルーム(異常増殖)が唯一発生する海域でした。このフィールド的に全くかけ離れたところでの研究は結果的にそのフィールドに生育し、一大産地でもあるマコンブの生態につながることが示唆する可能性が得られ、それはそれで興味深いものになりました。しかし、やはり赤潮原因藻類を主に使用しての研究であるので、どこかでその発生海域あるいは少なくとも多くの藻類種が自生している海域での研究を常々望んでいました。この度、こちらに赴任するにあたり、フィールドとしての宇和海という赤潮発生には適していない外に開放されている海域ではあるものの、そこに自生している藻類種をなるべく用い、海洋ウイルスが海産微細藻類に及ぼす影響について研究を継続していきたいと思っています。また、物質循環に関与する海洋微生物の生化学的機能すなわち海洋細菌由来の外膜タンパク質が溶存態として残存する機構を生化学的に解明していく研究を新たにこちらでは進めていきたいと思っています。
 最後に、正岡子規や夏目漱石をはじめとする文人が多く輩出した松山で研究者としての第一歩を踏み出されることを喜ぶに思い、非常勤研究員の任期は限られたものではありますが、精いっぱい研究に励みたいと思っています。

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ICS2000参加報告

ICS2000(International Coastal Symposium 2000:4月24〜28日)参加報告

 4月24〜28日、ニュージーランド・ロトルア市で開催された標記集会に参加した。シンポジウムのテーマはChallenges for the 21st Century in Coastal Science, Engineering and Environmentであり、21世紀に向けて沿岸域の堆積現象やそれに付随する現象に関する研究と理解の発展を意図したものである。シンポジウムの主な目的は、1.沿岸域のプロセスと堆積作用についての科学・工学・技術的認識を前進させる、2.沿岸域の環境保全や意志決定過程に工学的・科学的情報を生かす方法を進める、3.高度に開発されたあるいは未開発の地域における最適の管理手法を適用する際に役に立つ沿岸過程の研究を促進する、とされていた。

 組織委員長はワイカト大学テリーヒーリー教授で、彼は10年ほど前に日本各地の大学や研究所を訪問し、沿岸研究の情報交換を行っているので日本人の友人も多い。

 参加者は世界各国から約130名であったが、同種の会議がオーストラリアでも開催されるとかで、日本からの参加者は筆者を含めて2件のみであった。筆者は、「Large Scale Sand Dredging in Seto Inland Sea, Southwest Japan」という演題で講演を行った。参加して驚いたことであるが、海岸域の開発・防災・環境保全に関する主な発表は地質学的な背景を元に議論されており、技術論に終始した発表は少なかった。シンポジウムの日程は以下の通りであった。
4月24日 登録、 ポスターセッション、 アイスブレーカーレセプション
  25日 オープニング ロトルア市長 グラハム・ホール氏、キーノート講演、個人講演、
       午後 オヒワ湾、ランギタイキ海岸巡検
  26日 午前 キーノート講演、個人講演
      午後 タウランガ港、プレンティー湾のパパモア湾巡検
  27日 1日巡検
      ミランダ泥質海岸とケニアリッジテームズ市 ストームサージバリアタイルア港、パウアヌイ海岸管理と開発
  28日 午前 キーノート講演、個人講演
      午後 個人講演
 ほぼ毎日のように巡検があり、各地を見て回ることができた。巡検での主なテーマは以下の通りであった。

 海岸浸食とbeach nourishment、港湾開発と環境保全、浚渫ヘドロの海中投棄、ストームサージと防災(自治体―住民―開発者の連携)、別荘開発 管理と放任 誘導、ビデオを用いた海岸監視付記: 開催地のロトルア市はニュージーランド北島の中心にあるタウポ湖の北東約50kmにあるロトルア湖のほとりにある。温泉やマオリ文化を中心とした観光客の多い町である。ロトルア湖自身がカルデラ湖であることに示されるように、この地はタウポ火山帯に属し、温泉が多く点在する。

 ニュージランド到着日は雨が降り、寒さも感じられたが、翌日からは晴天が続き心地よい気温で過ごしやすい毎日であった。4月下旬といえば、日本では10月下旬の秋にあたる時期と思われる。紅葉を始めた木々もあったが、秋の訪れはこれからと思われた。

 帰国予定の日になって濃い霧のためローカル線が飛べず、帰りの国際線の飛行機に乗り遅れてしまった。しかし、航空会社(NZ)の手配で経路を変更することができた。オークランドまでの陸路を300キロ以上車で移動し、真夜中のシンガポール空港で飛行機を乗り換え、無事関西空港に帰り着くという貴重な経験をしたが、実りの多いシンポジウムであった。

文責:井内美郎

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編集後記:CMESは2年目を迎え、新メンバー2人も加わり、ますますにぎやかとなりました。CMESは、愛媛県では沿岸漁業が盛んであることから、愛媛大学の地域貢献の目玉として県内外からかなりの注目を浴びているようです。責任重大。地方大学の地域貢献の成功例として、花咲かせたいものです。(S.N.)    
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